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意外と街で見かける「LPガス」

タンクローリーの積載物紹介シリーズ、第8回はLPガスです。ガソリンや軽油を積んだタンクローリーは街で良く見かけますが、実は同じぐらい頻繁に見かけるのがLPガスを積んだタンクローリーです。

そもそもLPガスとはどんな物質でどんな用途に使われるのか、どんなメーカーがLPガス用タンクローリーを作っているのかをみていきます。

都市ガスの熱量調整や自動車燃料に使われるLPG

LPガス (LPG) は、liquefied petroleum gasの略称で、液化石油ガスという意味です。一般には「プロパンガス」と呼ばれ、家庭用の熱源として利用されています。LNGと名前が似ていますが、LNGがメタンを主成分とするのに対し、LPGはプロパンやブタンを主成分とする可燃性ガスを液化したものです。また、LNGが-162ºCで液化して体積が1/600になるのに対し、LPGは-42ºCで液化し体積が1/250になるという違いもあります。

LPGの用途としては、家庭や業務用の燃料が良く知られていますが、意外なところでは、都市ガスの熱量調節に使われます。都市ガスはLNGを規定の熱量になるように調整したものですが、この熱量調節のためにLPGが利用されます。ややこしい話ですが、都市ガスはLNGとLPGが混ざったものということになります。

また、自動車の燃料としてもLPGが利用されています。出力・トルクの面でガソリン車に劣りますが、コストが安く済み、なおかつCO2排出量が少ないというメリットがあります。日本では、タクシーや業務用車両以外にはあまり使われませんが、世界、特にロシアとトルコでは300万台以上のLPG自動車が普及しています (下図「LPG自動車の普及状況」を参照) 。

 

 

街で意外と見かけるLPG

LPGの生産方法は、油田や天然ガス田から取り出すか (随伴ガス) 、原油を精製する過程で分離抽出するかの2種類があります。世界で生産されるLPGの半分以上が随伴ガスとなっています。日本では、随伴ガスを輸入するか、国内で原油精製時に生産するなどしてLPGを調達しています。

これらのLPGは、工場やLPガススタンド、プロパンガスの充填所などに輸送されますが、その際に活躍するのがタンクローリー (液化ガスタンク車) です。

LPGを運ぶ日本車輌製造のバルクローリ「バルカーゴ」
LPGを運ぶ日本車輌製造のバルクローリ「バルカーゴ」

LPGを積んだ液化ガスタンク車は、ガソリンや軽油などを積んだタンクローリーよりもレアな印象がありますが、実は街中で見かける機会が比較的多い車両です。意識して探すと、石油系タンクローリーと同じぐらいの頻度で発見することができます。これは、LPGが家庭用の熱源や自動車用燃料、産業用燃料など、様々なシーンで活用されているためでしょう。

LPGタンクローリーを手がけるメーカー

興味深いことに、これらのLPGタンクローリーを作るメーカーは、一般的なタンクローリーのメーカーとは異なっています。石油系や粉粒体タンクローリーでシェアの高い極東開発工業新明和工業の製品ラインアップに、LPGタンクローリーは見つかりません。LPGは低温の高圧ガスであるため、高い断熱構造や耐圧構造が必要になるためでしょう。

例えば、LPGタンクローリーには「FP 2.1M」という表記がりますが、これは最高充てん圧力が2.1 MPa (メガパスカル) という意味で、タンクには大気圧の約21倍まで耐えられる性能が求められているということです。こうした性能を満たしたタンクを製造するためには、特殊な技術が必要です。

で、どのメーカーがLPGタンクローリーを作っているのかというと、日本車輌製造川崎重工業富士車輌などが挙げられます。

LPGを運ぶ川崎重工業のタンクローリー
LPGを運ぶ川崎重工業のタンクローリー
運輸会社はニイミ産業
LPGを運ぶ日本車輌製造のタンクローリー
LPGを運ぶ日本車輌製造のタンクローリー
運輸会社は東液供給センター
クミアイプロパンのLPガスを積んだ富士車輌のバルクローリー
クミアイプロパンのLPガスを積んだ富士車輌のバルクローリー

LPGタンクローリーのうち、LPガス配送先の容器にLPガスを充填することができるタンクローリーを充てん設備と呼び、一般にはバルクローリと呼ばれています。

日本車輌製造は、バルクローリの国内シェアトップメーカーで、「バルカーゴ」というブランドでバルクローリを製造販売しています。富士車輌のバルクローリは「フジホースワン」という名称です。

LPGタンクローリーは街で見かける機会が多いので、どんなメーカーが製造しているのかをチェックしてみると面白いですね。

参考文献

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