タンクローリーの積載物紹介シリーズ、第12回はフライアッシュ (fly ash) をとりあげます。
直訳すると「飛散灰」となりますが、何を燃やして出る灰なのか、また、どういった用途に使われる物質なのでしょうか。
石炭燃焼に伴って生じる灰
石炭は火力発電所の燃料として利用されていますが、石炭を燃やすと様々な残渣が発生します。Coal combustion products (CCPs) と呼ばれるこの残渣の一種がフライアッシュです。CCPsには、フライアッシュ以外にボトムアッシュ (クリンカアッシュ)や排煙脱硫副産物などが含まれます。
フライアッシュとは、石炭の燃焼によって生じたガスに含まれる微粒子の灰のことで、集塵機によって回収されます。クリンカアッシュも灰の一種ですが、炉の底に設置された水槽 (クリンカホッパ) に落下堆積したものです。フライアッシュとクリンカアッシュをまとめて石炭灰と呼び、発生割合はおおよそ9:1となっています[1]。
リサイクル率が高い石炭灰
石炭を燃やすとそれだけ石炭灰も発生するわけですが、石炭灰は利用価値の高い副産物でもあります。下のグラフは、日本における石炭灰の発生量と再利用量の推移[3]を示したものですが、特に近年では石炭灰のほとんどをリサイクルしていることがわかります。
リサイクルの用途としては、セメントの混和材、土木、建築、農林水産関係などに分けられます。具体的には、セメント原材料・道路路盤材・建材ボード・肥料など、多くの用途があります。ただ、実際にはセメント用が大半で、平成28年度の石炭灰有効利用分野[3]によると、セメント分野が70%を占めています。
フライアッシュのリサイクルが進むセメント分野
フライアッシュはセメント分野での再利用が盛んですが、どういった理由によるのでしょう。
その答えの一端が、下の写真にあります。これはフライアッシュの電子顕微鏡画像ですが、粒子が球状になっていて、その粒径が数μm〜数十μmと極めて小さいことがわかります。粒径が小さいフライアッシュを混和材としてセメントに加えると、セメントの流動性を上昇させることができます。セメントの流動性が上がることで、コンクリートの強度上昇につながります。
そもそも、コンクリートとはセメントと水が水和反応を起こして固まったものです。水和反応に必要な量以上の水を加えてしまうと、後に蒸発して空隙を生じるため、強度低下につながります。逆に、水が少ないと流動性が悪くなってコンクリートの打設が困難になります。使用する水の量を最小限に抑えつつ流動性を確保することが重要です。
微粒子で球形のフライアッシュが加わると、セメントの流動性が増します。すると、水使用量を従来よりも抑えることができるため、作業性を確保しつつコンクリートの強度を上げることができるというわけです[4]。
フライアッシュをセメント混和材に用いることの利点は他にもあります。セメントと水が水和するときに生じる反応熱を水和熱と呼びますが、セメントの一部をフライアッシュに置き換えると、水和熱を低減させることができます。
これは、セメントと水の水和反応の後に、水和物の水酸化カルシウムとフライアッシュが新たに水和物を形成するためです。水和熱が発生するタイミングがずれることによって発熱量が下がり、硬化時のひび割れを防ぐことができます[5]。なお、セメントの水和物とフライアッシュが起こす新たな水和反応をポゾラン反応と呼びます。
ポゾラン反応は、コンクリートの強度面にも貢献します。コンクリート内の微細な空隙にポゾラン反応によって生じた水和物が充填されるため、組織が緻密化して強度や耐久性を向上させることができます[5]。
混和材ではなく、セメント原料としてフライアッシュが利用されることもあります。粘土はセメントの主成分の1つですが、フライアッシュはこの粘土と似た組成を持っています (下図)。そのため、粘土の代替としてフライアッシュを用いることで、天然資源の消費を抑えることができます[4]。
フライアッシュを運ぶタンクローリー
フライアッシュは微細な粉末なので、輸送するタンクローリーは粉粒体運搬車です。上の写真は極東開発工業の粉粒体運搬車によってフライアッシュが運搬されている様子です。フルトレーラーを使って大量輸送されています。運輸会社は神戸運輸でした。
いまのところ、フライアッシュを見かけたのはこの1度きりです。年間1千万トンも発生しているので、もっと出会えてもいい気がします。火力発電所の多くは海沿いに立地しているので、多くは船で運ばれているのかもしれません。輸送方法に関する統計資料があるといいですね。
この写真からは、フライアッシュがどこに運ばれて何に使われるかはわかりません。セメント混和材となるのか、肥料として使われるのか、はたまた埋め立て処分されるのか。フライアッシュのほとんどがリサイクルされるので、どこかで知らないうちにまた出会えるでしょう。