粉末状もしくは粒状の物質を運搬するタンクローリー (粉粒体運搬車) は、積載物の排出方法によっていくつかのタイプに分類することができます。その中でも、エアスライド式とエアレーションブロー式は細かな粉粒体の運搬に適しているので、バラセメントや小麦粉などを運ぶ際に活躍しています。
どちらもエア車と呼ばれ、「エア」すなわち空気を使って粉粒体を排出する点では共通していますが、流動性の低い粉粒体をいかにして排出するかが異なっています。それぞれの構造の違いをチェックしていきましょう。
エアスライド式の排出メカニズム
下図は、エアスライド式のタンク内部構造を模式的に示したものです。エアスライド式のタンクは、横からみると二等辺三角形の頂点が下を向いた形 (横置き傾斜胴) をしています。
タンク内部の底面には布 (キャンバスシート) が貼られていて、ここから空気を吹き出して粉粒体を流動化させると共に、タンク内の圧力を上げます。流動化した粉粒体はタンクの傾斜に沿って頂点付近まで集まり、エアの圧力によってここから排出することができます。
空気によって粉粒体を流動化させ、タンクの傾斜をスライドさせて粉粒体を排出する機構がエアスライド式というわけです。
主に、流動化しやすいセメントやフライアッシュなどの運搬用タンクに採用されています。
エアレーションブロー式の排出メカニズム
エアレーションブロー式は、傾斜胴タンクを組み合わせた構造 (ホッパー型タンク) をしていますが、エアスライド式の傾斜胴タンクよりも傾斜が大きくとられています。
積載物は、タンクの傾斜によって各セラー式排出口に集まります。タンク内はエアによって高圧になっているため、セラー式排出口に集まった粉粒体を空気圧によって排出することができます。
エアレーションブロー式は、タンクの傾斜によって重力落下させた粉粒体を、空気圧で排出する方式ということになります。
主に、セメントや石灰、飼料などの粗粒子の排出に利用されます。
ちなみに、エアレーションブロー式は、エア圧送式やエアアジテーション式と呼ばれることがあります。粉粒体運搬車ジェットパックを製造している極東開発工業はエアレーションブロー式と呼び、バルクZを製造する新明和工業はエアアジテーション式と呼んでいます。
エアスライド式を併用したエアレーションブロー式タンク
エアレーションブロー式のタンクにキャンバスを設けた運搬車も存在します。重力落下によって集まった粉粒体をキャンバス (エアアジテーションキャンバス) から吹き出すエアによって流動化して排出するという仕組みです。
参考文献
- 逆瀬川正人 (2015) 粉ものを運ぶ専用粉粒体ローリー, モーターファン別冊 働くクルマのすべて, 三栄書房, 52-55.
- GP企画センター編 (2010) 特装車とトラック架装, グランプリ出版.