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可動式アーム内部をスクリューが回るブームオーガ式運搬車の構造

粉粒体を運ぶタンクローリー (粉粒体運搬車) のうち、エアスライド式とエアレーションブロー式バラセメントのような粒径の小さな粉粒体に適しています。

エアスライド式の粉粒体運搬車
エアスライド式の粉粒体運搬車

では、トウモロコシや大豆カス、配合飼料のように、粒径が大きいものについてはどうでしょう。エアスライド式やエアレーションブロー式が採用する空気圧では、大粒径のものを排出することはでません

そこで活躍するのがダンプ式やスクリュー式の運搬車です。ダンプ式は、タンク自体をダンプアップして、粉粒体を車体後方へ重力落下させるという単純明快なシステムです。スクリュー式は、タンク底部に設置されたスクリューが回転することで、粉粒体をスクリューの回転軸方向へ移動させて排出させるという仕組みです。

ダンプ式やスクリュー式を採用することで、粗粒体の排出が可能となります。しかし、これらの排出方式にも欠点があります。それは、積載物を車体の後方からしか排出できない点です。

荷下ろし先のサイロや貯蔵タンクにコンベアなどの搬送装置があるか、貯蔵タンクが地下にあるのであれば、後方排出でも問題ありません。しかし、貯蔵タンクに搬送装置が無い場合は、運搬車自体に搬送装置が必要になります。

大粒径の粉粒体を、単に排出するだけでなく搬送することもできる、そんな排出方式がブームオーガ式です。飼料運搬車に広く採用されています。ブームオーガ式とはどのような構造なのか、いかにして粉粒体を搬送するのかをみていきましょう。

ブームオーガ式とは

まずは、ブームオーガという言葉の意味を考えます。ブーム (boom) とはクレーン車のアーム部分を指す言葉です。また、高所にコンクリートを圧送することのできる車両はブーム車と呼ばれます。要するに、ブームとは長いアーム構造を指す言葉です。

コンクリートを高所へ圧送するブーム車
コンクリートを高所へ圧送するブーム車 (Wikimedia Commonsより)

一方のオーガですが、鬼を意味するogreではなく、スクリュー機構の掘削機augerのことです。

掘削に使われるオーガドリル
掘削に使われるオーガドリル (Wikimedia Commons)

ブームというアーム構造と、オーガというスクリュー構造を併せ持ったシステムがブームオーガ式ということになります。

ブームオーガ式の排出メカニズム

ブームオーガ式を採用した運搬車のタンクは、断面が5角形のホームベース型になっています。タンク底部に積荷が集まるようにするためです。タンク底部にはボトムスクリューが車両の進行方向と水平に配されていて、スクリューを回転させることで粉粒体をタンク後方に搬送します。

ブームオーガ式粉粒体運搬車の内部構造
ブームオーガ式粉粒体運搬車の内部構造 (特装車とトラック架装より作図)

後方へ運ばれた粉粒体は、車体後部に垂直に設置されたバーチカルスクリューによって車体上部へと導かれます。その後、ディスチャージスクリューによって高所まで運ばれて排出されます。

ディスチャージスクリューが収められているアームをディスチャージオーガと呼びますが、このオーガは可動式です。走行中は下の写真のように車体上部に水平に固定されていますが、目的の排出場所が高所の場合はオーガを動かして排出口の位置を調整します。

ディスチャージオーガの立ち上げはリモコンで行い、車体後部に配された旋回ハンドルを回転させることでオーガを旋回させることができます。

配合飼料を運ぶブームオーガ式粉粒体運搬車
配合飼料を運ぶブームオーガ式粉粒体運搬車

タンク内部は、危険物を運ぶタンクローリーのように複数の部屋に分かれている場合もあり、異なる品を混載することも可能です。各部屋の底部にはシャッターが設けられているので、シャッターの開閉によって目的の粉粒体のみを排出することができます。

新明和工業ファームパックをはじめ、極東開発工業や自動車精工がブームオーガ式の粉粒体運搬車を製造しています。道路上では、今は亡き東急車輛製造の運搬車も現役で走っているのを見かけることがあります。

外見からはわかりにくいですが、内部に複数のスクリューを備えるブームオーガ式の粉粒体運搬車、車体としての面白さは一級品です。

参考文献

  • GP企画センター編 (2010) 特装車とトラック架装, グランプリ出版.

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