タンクローリーの積載物紹介シリーズ、11回目はカオーライトナーです。
その分野に携わる人じゃないと、名前からはどんな物質かが全く分かりませんね。カオーライトナーがどんな分野で使われるのか、どんなシーンで活躍するのかをみていきましょう。
鋳造の砂型作りに欠かせない粘結剤
カオーライトナーは、フラン樹脂系粘結剤という物質の一種です。粘結剤とは、鋳造用の砂型を固めるために使用する物質です。
鋳造は溶解した金属を鋳型に流し込んで金属製品を作る技術ですが、この時に用いる鋳型には金属もしくは砂が使われます。砂の方がコストが低く短時間に造形できるので、一般には砂型がより広く用いられています[1]。
砂型は単に砂を押し固めただけでは強度が保てないので、粘結剤 (バインダー) という接着剤のようなものを添加して固められます。粘結剤は、無機系と有機系に大別できます。無機系の粘結剤として粘土やベントナイト、水ガラスなどが、有機系では油やデンプン、合成樹脂 (ポリマー) などが挙げられます[2]。
鋳型用合成樹脂として多用されているのは、フェノール樹脂系とフラン樹脂系の2タイプです。粘結剤は鋳造に利用されるものなので、耐熱性が高いものでなければいけません。また、溶けた金属を注ぐ注湯時に合成樹脂が分解されて発生するガスの毒性も考慮する必要があります。こうした条件を満たす合成樹脂としてフェノール樹脂系とフラン樹脂系が採用されています[3]。
フラン樹脂とはフルフリルアルコールやフルフラールを出発原料とするポリマーの総称で、粘結剤として用いることができるので各社からフラン樹脂系の粘結剤が販売されています[4]。
カオーライトナーもフラン樹脂系の粘結剤に位置付けられ、花王クエーカー社が製造販売しています。
カオーライトナーを作る花王クエーカーとは
カオーライトナーを製造販売している花王クエーカーは、花王石鹸 (現花王) とQuaker Oats Company (クエーカーオーツカンパニー) の合弁で設立された会社です。
花王は、衣類用洗剤アタックやヘアスタイリング剤リーゼなど、洗剤や化粧品を手がける国内大手メーカーです。日本人で知らない人はいませんね。一方のクエーカーオーツはアメリカの食品メーカーなので日本での知名度は低いですが、同社のオートミールはAmazon.co.jpでも販売されている定番商品です。
両社によって「粘結剤の製造と販売」を目的に設立されたのが花王クエーカーです。1974年に発足し、同年にはカオーライトナーを製造開始しています[5]。
花王自体もコンシューマープロダクツ以外にケミカル事業を手がけていますが、花王クエーカーは鋳造産業向けに特化しています。例えば、アルカリフェノールバインダーのカオーステップや木型用離型剤のカオーコートなど、カオーライトナー以外にも鋳造関連製品を製造しています。
カオーライトナーEFシリーズ
ここで、カオーライトナーを運ぶタンクローリーの写真を見てみましょう。このタンクローリーは向島運送が運用する車両で、積載品はカオーライトナーEF-1202となっています。EF-1202とはどういう意味をもつんでしょうか。
実は、カオーライトナーにはフラン樹脂以外の製品も存在します。フラン樹脂の硬化剤 (Cシリーズ, ECシリーズなど) や、発泡模型のむしり取りを容易にする収縮剤 (TAKシリーズ) などもカオーライトナーの名前で販売されています。
ということで、写真にあるEF-1202がどんな製品なのかとメーカーサイトで調べてみましたが、製品情報にはたどり着けませんでした。似た製品名のフラン樹脂としてEF-1112が販売されていますので、EF-1202はEF-1112の旧製品にあたるのかもしれません。
タンクには、危険物を表す「危」の標識と、第4類第3石油類の表示があります。このことから、カオーライトナーEF-1202は引火点が70ºC以上200ºC未満の引火性液体であることがわかります。フラン樹脂の原料となるフルフリルアルコールは第3石油類ですからね。
しかし、メーカーサイトに公開されているカタログによるとEF-1112は非危険物です[6]。これはいったいどういうことでしょう。EF-1202とEF-1112はどういった関係にあるんでしょうか。詳しい成分が公開されていないので、これ以上は一般人には調べられそうもありません。
もし今後新しい情報を入手できれば、内容をアップデートする予定です。