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アルミ製タンクローリーの雄「昭和飛行機工業」小史

昭和飛行機工業の誕生

1934年 (昭和9年)、航空機の軍需拡大を見越した伊東久米蔵 (合資会社東京衡機製造所代表社員) は、伊東幸吉 (予備役海軍機関大佐) とともに航空会社の設立を協議します。

1937年、三井鉱山株式会社会長であった牧田環を初代社長として、昭和飛行機工業株式会社が設立されました。

DC-3の製造と国産化

会社設立当時、すでに日本には三菱重工業、川西航空機、中島飛行機、立川飛行機などの航空会社が存在していました。新規参入である昭和飛行機工業は、こうしたなかで他社があまり手がけていない輸送航空機の製造に着手します。当時、まだ海軍次官であった山本五十六の命を受け、ダグラス社のDC-3型双発輸送機 (零式輸送機) を製造することになりました。

昭和飛行機工業の零式輸送機
昭和飛行機工業の零式輸送機 (Wikimedia Commonsより)

ダグラス社と技術提携を結び、最初は輸入した部品をもとに組み立てを行っていましたが、1941年には国産部品での製造に成功します。国産一号機は海軍へ納入されました。この時のエンジンは、三菱「金星」43型 (900馬力) を使用しています。1945年まで、のべ430機を製造しました。うち、393機は海軍へ、29機は大日本航空輸送へ、8機は中華航空へ納入されています。

DC-3型機以外の戦前の主力製品は、愛知航空機の設計した九九式艦上爆撃機 (D3A2) でした。1945年まで計220機を納入しています。

愛知航空機が設計したD3A2
愛知航空機が設計したD3A2 (wikimedia Commonsより)

また、川西航空機工業の紫電改 (N1K2-J) も発注されましたが、終戦間際であったため、わずか2機しか生産されませんでした。川西航空機工業は、現在の新明和工業の前身です。

米軍車両の整備から学ぶ

1945年、戦争の終結により本社工場であった東京製作所は米軍に接収され、空軍昭和基地となります。戦後、飛行機製造が禁じられたため、昭和飛行機工業は基地内で米軍の車両やエンジンの修理・部品製造などを担うようになります。

このとき扱っていた車両は多岐に及びますが、その中の一つに航空機への燃料給油を行う燃料給油車「F-1A給油車トレーラー」がありました。現在の昭和飛行機工業の主力製品の一つでもある給油車は、この時のF-1Aを原型としています。

F-1A給油車トレーラー
F-1A給油車トレーラー (昭和飛行機工業五十年史より)

トラックの受託生産

1962年頃、昭和飛行機工業の主力事業はトラックの受託生産でした。富士精密工業(のちのプリンス自動車工業)との連携により、「マイラー」や「クリッパー」、「ホーマー」といった小型トラックの生産を受け持っていました。また、日野自動車工業の大型車用キャブやシャーシなども受託生産しています。1981年に発売された日野の大型トラック「スーパードルフィン」も共同開発によるものです。

プリンス自動車工業の1962年式マイラー
プリンス自動車工業の1962年式マイラー (Wikimedia Commonsより)

トラック以外では、特装車のキャブやシャシー、汎用エンジンの開発・組み立てを日野自動車工業から受託しています(1960年代ごろ)。

タンクローリー・バルクローリーの生産

1962年になると、需要増加が見込まれるタンクローリーの生産を開始します。この頃、飛行機製造で培ったアルミ加工の技術を応用し、軽量で耐久性に優れたアルミ合金製タンクローリーを他社に先がけて開発しています。

また、1971年には灯油用14,000Lアルミ製タンクローリーを製造しました。これは、法規上の最大容量を積載できる日本初の大型車両でした。

粉粒体を運搬するバルクローリーについては、西ドイツのLudwig Spitzer Senior K.G.との技術提携を受け、1968年から生産を開始しました。

現在のタンクローリー

現在、昭和飛行機工業では、主に危険物の運搬に使われるアルミ製タンクローリーや、食品・化成品などを運搬するステンレスタンクローリー、さらに粉粒体を運搬するバルク車や燃料給油車など、様々な業界で活躍するタンクローリーを幅広く製造しています。アルミ製タンクローリーでは、国内市場のシェア約3割を占めています。

小麦粉を運ぶ昭和飛行機工業のアルミ製タンクローリー
小麦粉を運ぶ昭和飛行機工業のアルミ製タンクローリー

参考文献

  • 昭和飛行機工業株式会社(1987)昭和飛行機五十年史, 昭和飛行機工業.
  • 昭和飛行機工業株式会社編(1977)昭和飛行機四十年史, 昭和飛行機工業.
  • 企業ウェブサイト, http://www.showa-aircraft.co.jp/

会社情報

昭和飛行機工業株式会社 (SHOWA AIRCRAFT INDUSTRY CO.,LTD.)

本社所在地:196-8522, 東京都昭島市田中町600番地

http://www.showa-aircraft.co.jp/

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