メニュー 閉じる

海軍の戦闘機を作った「新明和工業」タンクローリーメーカー小史

紫電改を製造した航空機メーカー

新明和工業の前身は1928年創業の川西航空機株式会社です。海軍の指定工場として、海軍が設計した機体の製造を担当していました。のちに、海軍からの受注を受けて川西が自社設計するようになります。九十四式水上偵察機は、川西が設計して海軍に正式採用された最初の機体です。ほかにも、九七式飛行艇紫電改など、飛行艇や戦闘機の製造を行なっていました。紫電改(NIK2)は、B29型爆撃機の迎撃機として海軍の誇る最新鋭機でした。

紫電改
紫電改 (Wikimediaより)

戦後は民生品の製造に着手

戦後、航空機の製造が禁止されたことを契機に、軍需から民需へと事業を転換していきます。1946年には三輪自動車の試作を行い、翌47年に量産を開始しました。自動車の名前は、戦時中に川西航空機の秘匿名称であった「神武秋津社」から「アキツ」と名づけられます。この流れで1949年に明和自動車工業が誕生しますが、1956年にダイハツ子会社の旭工業に譲渡され解散しています。

三輪自動車とは別に、オートバイの製造にも着手します。イギリスのVilliers(ビリアス)のエンジンを参考にして排気量56ccの小型発動機を開発し、「ポインター」として売り出します。運転免許の試験場では「ポインター免許の方はあちら」という張り紙がされていたというエピソードがあるぐらい、当時はかなりのシェアを持っていたようです。

また、この時期に自吸式ポンプやワイヤーストリッパーが開発されています。自吸式ポンプは水中ポンプへと発展し、現在でも下水処理場や雨水排水で活躍する新明和の主力事業です。ワイヤーストリッパーとは電気製品の配線材を切断し被覆を剥ぎ取る装置です。これも、現在の機械プラント製作所の主力製品です。

このように、戦後は今日の新明和へとつながる事業展開が行われた時期ですが、一方で、パン焼オーブンや進駐軍向けのローラースケートなどの制作も行われていました。海軍のための飛行機しか作っていなかった川西が、民需に転換するために暗中模索していたことがうかがえます。

ダンプの製造

川西が航空機製造を行なっていた兵庫県の鳴尾工場は、戦後、甲子園デポーと呼ばれる西日本全域のアメリカ陸軍の自動車整備を担う整備工場へと転用されます。川西は、ここで車両の整備作業を担うようになります。当初は整備作業だけでしたが、1949年にはGarWood(ガーウッド)の部品をそのまま使用してダンプを組み立てます。さらに、シリンダー用ギアポンプを設計するようになり、着々とダンプメーカーとしての技術・経験を蓄積していきます。

GarWoodの創業者Garfield Wood
GarWoodの創業者Garfield Wood (Wikimedia Commonsより)

1950年に勃発した朝鮮戦争による動乱の特需で、アメリカ軍がトヨタにダンプカーを発注します。この下請けを担うことでダンプ製造に本格参入していきます。1956年には、いすゞ自動車のビルマ向けダンプ50台を受注するなど、ダンプメーカーとしての地位を確立していきました。

新明和工業の誕生

戦後は航空機の製造ができない状況であったため、「明るく和していく」という意味を込めて明和興業株式会社へと社名を変更します(1947年)。

1949年には新明和興業株式会社を設立。1960年には現在の社名「新明和工業株式会社」に変更。これと同時に日立製作所の傘下に入りました。

航空機メーカーとしての実績

1952年に航空機の製造が解禁されたことをうけて、特装車や産業機器に加えて航空機事業を進めていきます。

1967年に飛行艇PX-S、1974年には水陸両用飛行艇PS-1(US-1)を開発、1979年にはボーイング767の胴体部品、1992年にはボーイング777の翼胴フェアリングの生産など、航空機メーカーとしての実績を積み重ねていきます。

岩国航空基地で保存されているPS-1
岩国航空基地で保存されているPS-1 (Wikimediaより)

近年でも、エアバスA380ボーイング787についても開発製造の一端を担うなど、航空機は現在でも新明和の主力事業となっています。

特装車のラインナップ

特装車としては、液体輸送タンクローリーから粉粒体運搬車、ミキサー車まで幅広くラインナップしています。東邦車輛株式会社は新明和工業傘下のグループ会社。

参考文献

  • 新明和興業株式会社社史編集委員会(1979)社史1 新明和興業株式会社, 新明和工業.
  • 企業ウェブサイト, http://www.shinmaywa.co.jp

会社情報

新明和工業株式会社 (ShinMaywa Industries, Ltd.)

本社所在地:665-8550, 兵庫県宝塚市新明和町1-1

http://www.shinmaywa.co.jp

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。